2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

映画感想「希求としての家族」― 園子温『紀子の食卓』

背中を走る不快感、顔が引きつる様な違和感が、この「食卓を囲む家族」という形から発している。だか、この偽りの食卓の中には、彼らの見出した願いが嘘の役割を通じて語られる。「紀子の食卓」、この4人の囲む食卓には何層にも重ねられた嘘に、それぞれの希…

「体温のある死」―読書感想文・小川洋子『冷めない紅茶』

小川洋子の中編小説『冷めない紅茶』とは、不可思議な死と言う概念を日常から隔てる事なく、分けがたい人間の営みの一つとして捉え、抜き出した物語である。 死とは、隠しておきたいもの、風化していくもの、あるいは忌まわしいものとして、私たちの日常から…

「私とあなたの境界はどこにある?」―読書感想文・梨木香歩『沼地のある森を抜けて』

先祖伝来のぬか床にまつわる、摩訶不思議な存在の物語、と言うと、ささやかな心温まる内容を想像するかもしれないが、この『沼地にある森を抜けて』は、酷く内面的なテーマを扱っていながら、途方もない広大さを持つ物語である。 沼地のある森を抜けて (新潮…

モノノ怪『のっぺらぼう』考察おまけ「夢幻の庭の花」

「のっぺらぼう」の冒頭と終幕に現れるこの障子の図像は、どこか不気味で、一つ目の化け物のようにも見えます。 この図像は「海坊主」の図像でも検証しましたが <a href="http://sayokokarikari.hatenablog.com/entr…